オベリン年代記最終章
第六章
我はココが大神殿を破壊するのを見詰めていた。やがて我は漸く彼の支配を抜け出でて我が隠れ家に身を潜めることが出来た。最早彼は我の事など気に留めずと思えり。
この世界が過ぎ逝き、我もまた・・・消え逝かん。他なる世界がかくのごときぬばたまの暗黒の運命に堕ちて逝くことなきよう、神々に祈るのみ。恐らくは彼等には我ごときの及ばぬ叡智と洞察があろう。我は我が魔力の筆に専心しつつもココの行き着きし終の園を眺めている。我は彼に警告を試みたのだ・・一度龍共の頭数が満ちたなら、指輪の有無に関わらず彼等に抗す事能わず、と。彼が耳を傾けようはずもなく、龍共は為すべき事を為せり。龍共はまた一つの世界の破壊を夢見て眠りへと戻る前に大地を食い散らかし、破壊し、その後には打ち捨てられし荒れ地が残るのみであろう。
我はと言えば、何方かに読まれる事を念じてこの世界の歴史を書き続けんとしている。いざ、この仕事が終わりし後は我が最後の力を以て理を解する者の手へと落ちることを祈念しつつこの書を次元のエエテルに投げ込まん。我はオベリンの勇敢な臣民達を忘れぬ。皆の夫々に語るべき物語があった。時が許せばそれらの全てを貴殿等のために書き記さん。我は敢えて言う。ここでの生は十分生きるに値するものであったと。ここに彼等全てに対する我が失策を詫びよう。いつの日にか許されんことを。
いざ、さらば。
貴殿との善き邂逅に、
セス
大魔導師にして無分別なる愚か者