オベリン年代記最終章
第二章
我は我が椅子に背をもたれ我が唯今目撃せり事象を黙考す。プルウグは自らその身を曝しベイン共が来たりて彼を捕らえんと試みるを嘲るのだった。我は従者を遣わし王を差し招かんとす。之を見るのが我一人とならぬように。我はプルウグが墓苑を征し彼が愛玩する蝙蝠を撫でるのを見詰めた。之が戦の緒戦であることは必定。彼はベイン共が彼の元への来攻を決して止めぬと知らねばなるまい。彼等は彼の頑な昏き兵士共の護りに弾き飛ばされん。彼等は其れと為し、プルウグは一人また一人と彼等を倒して行った。我が之を気に病み始めたとしても仮にも彼がかくのごとき威容を以て我の元へと来りなば何が起ころうか。イアンは我が肩を叩き彼が龍石の指輪を揮う限り死霊は寄付けないのだと我を得心させた。
水鏡の輝きの中にも、我が退けて久しい形姿が闇の中より出現せり。ベインの一味となりし、如何に傲慢に過ぎようとも手練なる魔導師が現れたのだ。プルウグでさえ彼の手から解き放たれし魔力を感じたであろう、彼が来たれり。彼は囚われの身となった後甚だしき変容を遂げた。彼の肌は荒れて白く、彼の眼は鍛冶場の炎のごとく燃えていた。魔力を孕んだ黒衣に身を包みぬばたまの黒魔術の顕現に因りプルウグの生ける死屍共を寄せ付けなかった。
其れは瞠目すべき大いなる眺めであった。二人なる魔道の戦士が戦場にて互いに向き合えり。半時間以上もの間ドミヌスはエルドリツチ式呪法による苛烈なる戦慄の稲妻を以て死霊の盟主を痛めつけることが出来た。されど殆ど何の前触れも無く、プルウグは陽気な笑みと共に彼の真の魔力を自らに疑念を持たぬ魔導師の上に解き放ちこの魔導師とただ戯れていたに過ぎぬのだという事を知らしめた。
彼の精神は安定を欠いていたものの、依然として如何に優位に立ちあらゆる抵抗を粉砕するかの術に通じたり。かくのごとく、事は終わり、其の名をドミヌス、全オベリンに荊なす暗黒面は去りぬ。
イアンと我は互いに信じられずに見詰めあった。我等はこれ以上の何を望めると言うのか。いや望めまい。プルウグは本当に我等が地上よりベインを永遠に葬り去ったのか。其が真実なりとしたらば彼は今やどれほどの業を為し得るのであろうか。我等が感喜は即座に恐怖へと転じたり。次に来るべき事は何か、我が技量に無謀なるを課し痛苦に果てようとも、この収穫を待つ豊饒なる世界を護るべし。
-
○墓苑にて向き合う死霊のプルウグとベインのドミヌス
ベインのドミヌス: 死人を探しておる
○辺りには生ける屍の群れ
死霊のプルウグ: 而して汝は我を探り当てた
○ベインにも勝る尊大さで対峙するプルウグ
死霊のプルウグ: よしよし、ドミヌスは遂に我を発見せり。なんと喜ばしいことよ。
○ベインのドミヌス答えて曰く
ベインのドミヌス: 我がベインは死霊如きには倒せぬ
○更に尊大に答えしプルウグとドミヌスの宣戦布告
死霊のプルウグ: 嗚呼、なんという・・汝の首領今は亡し、ベインは終わりぬ。
ベインのドミヌス: 我等は汝を鬼籍に加えねばならぬ。
○ドミヌスを見透かしつつ煽るプルウグ
死霊のプルウグ: よかろう。されど勘違いな哀れ貧しき魔導師はどうなろうか?
ベインのドミヌス: 勘違いだと、汝に真の魔力を示さん!
○プルウグ、答えて曰く
死霊のプルウグ: さても、見物よのう、来れ!
○開戦
死霊のプルウグ: 彼等は懲りるということを知らぬな・・・
○互いの消耗は激しくドミヌスは既に瀕死、されどー
ベインのドミヌス: 我は負けん!
○終戦
死霊のプルウグ: 汝は既に負けておる(笑みを浮かべ)プルウグを恐れよ!
ベインのドミヌス: 我は影となりぬ