オベリン年代記最終章
第一章
始まりは常日頃と変わらぬ日なれど、むずがる臓腑と頭蓋の鈍痛が何事か只事では無い兆しを孕んでいた。我が水鏡は素晴らしき微睡みより我を覚醒させるに足る何物かに粟立っていた。我は其らに導かれるままに詞を口遊み、幻夢へと誘われた。有触れた朧げな混濁は突如として清澄透明となりぬ。生ける死屍の群れの只中に悠々と立つは我が生涯随一の強敵、かつての生者にして今や死霊となりしプルウグならん。我は我が視野を広げんともがき彼の正確な所在を確かめんとするも、彼が故意に自らの結界呪法を解いたのだ、と悟った。彼は自ら発見されることを求めたのだ。とりわけ彼の魔力が最強となるであろう場所に於いて。彼は何事を企てようとしていたのか。我は惑えり。
彼は我を戰へと誘っていたのか。彼は邂逅を望んだのか。不明なままに我はその何れにも備え身支度を始めた。我が彼の所在を検分するべく専心する前にも答えは明らかとなった。彼は我を探していたのではない。彼の企ては遥か面妖なるものであった。
彼等の流儀に則り、謎なるベインが影より出でてかつて全ての人々に対したのと等しく尊大にして不敬な素振りで冥府の主に対峙していた。言うまでも無くプルウグが動じることなどなかった。我は暫し立ち尽くしベインの首領と郎党たるドルイドが湿地より沸き出でて彼の主の周囲に群れ成す生ける死屍の軍勢に立ち向かわんとするを眺めた。
瞬く間のことであった。死霊が怒りに指を微かに震わすことなくともベインの刺客共は餓えた死屍共の餌食以外の何物でもなかった。遥か昔我が彼を鬼籍へと追い遣って後かくも強大な魔力を持つに至れりとは。我は愚鈍にも古の魔術を以てこの者の亡骸を探し求め蘇生せり降霊術師にして不届きな愚か者共を探し出し罰を下さんと我が心に刻むのであった。何れにせよ彼等の支払し代償は余りにも高価なり。
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○何処とも知れぬ墓地にて邂逅する死霊のプルウグとベイン共
ベインの首領: ベインは死霊を発見せり
○死霊のプルウグ、答えて曰く
死霊のプルウグ: おおそうか? 其れは興味深きこと。我思うに汝が発見されておるのだ
死霊のプルウグ: 分からぬか? 我は汝等を待っていたのだ。
○生ける死屍共がベインを襲う
死霊のプルウグ: 我が生ける死屍共に命ずれば汝等はプルウグを恐れようぞ!! はははは!
○程なく死せるベイン
ベインの首領: 有り得ぬ!
○プルウグ、愚かなるベインを嗤い、幽冥の徒となりしベインの首領答えて曰く
死霊のプルウグ: あははははははははあ、ベインを恐れよとは・・真に片腹痛し
ベインの首領: ドミヌス来りなば、彼が餌食にしてくれよう